住宅ローン減税は住宅ローン控除とも呼ばれます。住宅ローンを借りたことのある方はご存じの方も多いと思います。今回はその住宅ローン減税が2022年より改正されることとなりましたので、変更点について説明いたします。
住宅ローン減税の知識を習得する前に、住宅ローンに基本知識に不安がある方は、まず下の記事をご覧ください。
目次
住宅ローン減税とは?
概要
住宅ローン減税とは、住宅ローンを利用して住宅を新築もしくは取得もしくは増改築をした際に、住宅ローンの年末残高の合計額等を基として計算した金額を、毎年の所得税額から控除するものです。
控除額は年末時点の住宅ローン残高の1%となっていました。住宅ローン減税にすごいところは、所得控除ではなく税額控除である点です。
所得控除と税額控除の違い
少し話がそれますが、所得控除と税額控除の違いを説明しておきます。住宅ローン減税の変更点についてだけ知りたい方は読み飛ばしていただいても結構です。
所得控除
所得控除とは、毎年の課税所得金額から所得控除額を控除することを言います。
例えば、課税所得金額が400万円、所得税率が20%、所得控除が30万円の場合、支払う所得税額は、(400万円-30万円)×20%=74万円となります。
税額控除
一方で税額控除とは、毎年の課税所得金額から所得税率をかけて所得税額を算出したのちに、その所得税額から税額控除額を控除することを言います。
例えば、課税所得金額が400万円、所得税率が20%、税額控除が30万円の場合、まず算出される所得税額は400万円×20%=80万円となります。このとき税額控除が30万円だったとすると、算出された80万円から30万円差し引かれた50万円が最終的な所得税額となるのです。
所得控除と税額控除は似て非なるもの
以上のように、同じ課税所得金額と同じ所得税率でも、控除が所得控除なのか税額控除なのかによって最終的に支払う所得税額が大きく異なることがわかりますね!住宅ローン減税は税額控除ですから、一口に控除と言っても他の所得控除よりも節税効果が大きい施策と言えます。
2022年住宅ローン減税の変更点とは?
前置きが長くなりましたが、ここから本題の2022年住宅ローン減税の変更点を記載します。
2021年までの住宅ローン減税
これまでの住宅ローン減税の概要は以下のとおりです。
- 控除額は年末時点の住宅ローン残高の1 %
- 控除の対象となる住宅ローンの限度額は最大4,000万円まで
- 控除期間は10年間(最近は消費増税特例で13年間でした)
- 床面積は50㎡以上(所得1,000万円以下の人は40㎡以上)
- 所得3,000万円以下の人が対象
例えば、とある年の住宅ローン残高が4,000万円あった場合、4,000万円×1%の40万円が税額控除となり、所得税額から差し引かれていました。2021年までの税額控除1%はものすごく大きいです。最近の住宅ローン金利は変動金利だと0.3%台はザラでしたから、0.3%の金利を支払うと1%分の税額控除が受けられる、いわゆる逆ざや状態になっていました。
2022年以降の住宅ローン減税(2025年末まで)
対して、2022年以降の住宅ローン減税の概要は以下のとおりです。
- 控除額は年末時点の住宅ローン残高の0.7 %
- 控除の対象となるになる住宅ローンの限度額は最大3,000万円まで(※)
- 控除期間は新築13年間、中古取得10年間
- 床面積は50㎡以上(所得1,000万円以下の人は40㎡以上)
- 所得2,000万円以下の人が対象
大きな変更点は上2つでしょう。上と同じ例を挙げると、とある年の住宅ローン残高が4,000万円あった場合、いくら残高が4,000万円あったとしても、控除額算出のための限度額は3,000万円ですので、3,000万円×0.7%の21万円が税額控除となり、所得税額から差し引かれることとなります。
同じ価格の住宅を購入し、同じ借入額のローンを組んだとしても、税額控除が上記の例で19万円下がることとなってしまうのです。
※算出根拠となる住宅ローン残高の上限額は、新築、購入する住宅の性能によって変わります。詳細は以下の画像の借入限度額の部分をご覧ください。

今回の改正によって、高額の住宅ローンを組む場合には以前と比べて不利になるケースが想定されます。その場合、夫婦連帯債務で住宅ローンを借りることで、夫婦とそれぞれが限度額の範囲内で住宅ローン減税の恩恵を受けることができます。例えば、住宅の持分が1:1だった場合で住宅ローンの残高が4,000万円の場合、夫も妻もそれぞれが2,000万円の残高を有しているとみなされそれぞれが住宅ローン減税を受けることができるのです。
住宅購入の際の論点は住宅ローン減税だけではない
以上が住宅ローン減税の変更点となります。控除率が下がったことで、基本的には改悪と言われることの多い住宅ローン減税ですが、住宅購入の際の考慮すべき点は住宅ローン減税だけではありません。
実は筆者は2021年9月に住宅の請負契約を結んだため、2021年までの住宅ローン減税を受けることができるのですが、その時期は新型コロナウイルス感染拡大によるウッドショック(世界的な木材価格の高騰)があったため、請負価格が数十万円単位でアップしてしまいました。私の場合は、木材価格が今後下がる保証はないことや、年々高騰する人件費の影響もあって請負価格が下がることは考えにくいことから、待つことは得策ではないと考え計画をそのまま進め契約に至りました。ちょうど娘が産まれ、新築を予定していたことが一番大きな要因です。
住宅購入はライフプランの中で一番大きな支出です。住宅ローン減税は改正されますが、ライフプランをしっかり考えて住宅購入という大きな決断をしたいですね。