企業や経営者にとって、必要不可欠ともいえる事業計画書。
今回は、事業計画書とは何なのか、作る目的や作り方について、銀行員である筆者が解説いたします。
目次
事業計画書とは
事業計画書とは、経営者が事業をどのように運営していくのか、計画したアクションプランなどを明文化した計画書のことを言います。
経営者の頭の中を明文化することで、その実現可能性を内外に示すことができます。
事業計画書の必要性
銀行員である私の肌感としては、事業規模が小さいほど事業計画書を作成していない企業が多いように思います。そして業績が芳しくない企業ほど事業計画書を作成していないケースが多いです。しかし、事業規模の大小にかかわらず事業計画書は必要です。
企業の資金調達のために
事業計画書の必要性に迫られるケースとして一番イメージがつきやすいかもしれません。
企業が発展したり、コロナ禍のような難局を乗り越えたりするために、金融機関から融資を調達したり、投資家から出資を受けたりするケースがあります。この際にも事業計画書が必要になります。 金融機関は貸した資金を滞りなく返済できる企業にしか融資をしません。投資家は収益を上げて企業を成長させることができると判断した企業にしか出資しません。金融機関や投資家が何をもってそれらを判断するかと言えば、これまでの事業実績である財務諸表や、説得力のある事業計画書なのです。
変化する環境に対応するために
昨今、企業を取り巻く経営環境は大きく変化しています。今後も人口減少による市場の縮小や人手不足が進んでいき、先行きは不透明です。このように企業が将来の見通しを立てることが難しくなっているからこそ、効率的に自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ)を投入できるよう経営戦略を立てる必要があります。
自社で働く従業員に向けて
また、自社で働く従業員には様々な方がいます。何の不満もなく働いてくれる人もいれば、自分の働く会社の先行きを不安視している人もいます。従業員に対して、経営者の考える事業計画を示すことは、企業が向かっている方向に対しての一体感を醸成することにつながります。
事業計画書には詳細な経営情報が記載されていますので、従業員に示す場合には示したい部分だけ抜粋するなどの配慮が必要です。

事業計画書の作成方法
事業計画書は、明確に決まったフォーマットがあるわけではありませんが、経営者が思うままに無秩序に記載してはいけません。対外的に示すケースもあるため、おおよそ決められた項目を盛り込み、内容を整理する必要があります。
記載するとよい項目を以下に列挙します。
- 会社概要
- 企業理念、ビジョン
- 自社の取扱商品やサービスの特徴
- 外部環境、競合について
- アクションプラン
- 損益計画
- 資金収支計画
各項目についてより詳しく記載します。
会社概要
自社の基本的な情報を記載します。
例えば、企業名、所在地、事業内容、設立(創業)年、代表者名、従業員数、資本金の額などを記載します。
企業理念、ビジョン
経営者の事業運営に対する思いや考えを端的に表したものです。
例えば、牛丼屋を運営する吉野家ホールディングス株式会社であれば、「For the People すべては人々のために」ですし、作業服屋を運営する株式会社ワークマンであれば、「For the Customers 機能と価格に新基準」となっています。(調べた2社がたまたま似た企業理念でした)
自社の取扱商品やサービスの特徴
競合他社にはない自社の取扱商品やサービスの特徴や強みを記載します。自社のことを細かく分析できているかが焦点となります。自社の強みは後述のアクションプランにも活かされていきます。
外部環境、競合について
企業は日々、外部環境の変化や他社との競合に晒されています。それらを的確に分析できているかが問われます。市場のニーズの変化や、競合他社の動向を記載します。統計情報をもとに表やグラフを用いると分かりやすくなります。
アクションプラン
自社の特徴や強みを活かし、外部環境の変化や競合に打ち勝っていくために立てる作戦をアクションプランと言います。実現可能性が高く、かつ、より具体的なアクションプランが求められます。
損益計画
アクションプランを実行に移すことで、企業がどのように成長していくかを、具体的な損益計画に落とし込みます。年度ごとにどれだけの売上を上げるか、そのためにはどれだけの原価や経費がかかって、どれだけの利益が残るかを細かく記載します。絵に描いた餅になってはいけないので、ここでも実現可能性が高い数値計画であることが求められます。
この損益計画と次の資金収支計画を参考に、その実現可能性に無理がなく説得力があるか、銀行であれば無理なく融資が返済される見込みがあるか、投資家であれば企業がしっかり成長していくかを判断します。
資金収支計画
資金収支計画は、計画上の収益をもとに、資金の出入りを年度ごとに示したものです。損益計画には表れない、金融機関や投資家からの資金調達、返済、配当などもこちらに記載します。
おわりに
いかがでしょうか。事業計画書はフォーマットがインターネット上で簡単に手に入りますし、国の金融機関である日本政策金融公庫のホームページからも各種計画書のフォーマットがダウンロードできますのでご活用ください。
参考:日本政策金融公庫(国民生活事業)ホームページ https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html
現代社会は、以前と比べて変化の激しい時代になっています。明確な事業計画(=目標)が、変化の激しい時代の道しるべとなります。
これを機会に具体的な事業計画書の作成に着手してみませんか。